今更ながらド素人がMMTを勉強してみた
「日本の未来を考える勉強会」ーMMTポリティクス〜現代貨幣理論と日本経済〜ー
令和元年5月17日 講師:経世論研究所 所長 三橋 貴明氏
https://www.youtube.com/watch?v=CMLYpWlQp1E
について内容を理解するために自分なりに出来るだけ簡単に纏めてみました。 画像はyoutubeからの引用および加工したものです。
ついでに誰かのお役に立てれば幸いです。
- MMT(現代貨幣理論)における財政の考え方
- おカネの成り立ち
- 銀行の性質
- 誰かが借りなければ預金は増えない!
- 政府が国債を発行すると、家計の預金が増える
- 天動説な経済学「おカネのプールがある」
- インフレギャップとデフレギャップ
- MMTが正しい理由
- 政府の借金の実態
- 政府の赤字は民間の黒字
- 統合政府の純負債は悪者か?
- 【余談】国債発行や徴税がなくても政府は日銀当座預金を発行してもらえる
MMT(現代貨幣理論)における財政の考え方
MMTの特徴【結論】
自国通貨を持つ政府は、財政的な予算成約に直面することはない
日本円建ての国債しか発行しておらず、自国通貨を持つ日本政府が財政破綻することはない。全ての経済は生産と需要について実物的あるいは環境的な限界がある
政府に財政的な制約が無かったとしても、(国民の)供給能力の不足によるインフレ率が限界になる。
供給能力(=経済力)は、民間や政府の投資により強化される。
経済力強化は、国債発行の上限を押し上げる。政府の赤字は、その他の経済主体の黒字である
誰かの資産は、誰かの負債。誰かの黒字は、誰かの赤字。
地球上に住んでいる限り、逃れられない法則である。
おカネの成り立ち
英国の金細工商ゴールド・スミス(1650年代)
←銀行預金の起源
当時、金貨(通貨)を沢山持っている商人は手元に置いておくのが心配だったため、ゴールド・スミスの金庫に預け「金匠手形(預り証)」を受け取っていた。
ゴールド・スミスは金庫にある預かった金貨を別の人に貸し出すことを思い付いた。
金貨を借りた人が、その金貨で支払いを行い、支払いを受けた商人は手元に貯まった金貨をゴールド・スミスの金庫に預け「金匠手形」を受け取る。←金匠手形を持つ商人が増える
ゴールド・スミスが発行した「金匠手形」が、いつの間にか金貨の代わりに市場取引で使用され紙幣として流通していった。←ゴールド・スミスにわざわざ行って金匠手形と金貨のやり取りをする面倒な手間を省略
現代的な銀行業の成立
このゴールド・スミスがそのまま銀行に置き換わった。
銀行の性質
銀行が貸すのは「預金」
銀行の貸し出しとは、単に預金通帳の「お預り金額」に数字を記帳するだけ (万年筆マネー)
銀行は借用証書を担保に、ゼロから預金というおカネを発行している!
→ 誰かがおカネを借りない限り、銀行預金というおカネは絶対に生まれない!
持ってる現金紙幣を銀行に預けるじゃないか!という方、次で説明します。
銀行のおカネ発行プロセス
借用証書を持ち込んで銀行預金を発行するパターン
→自分が発行した借用証書を銀行に持ち込んで預金を発行。現金紙幣を持ち込んで銀行預金を発行するパターン
→現金紙幣は日銀の借用証書。その証拠として「日本銀行券」と書かれている。
つまり他人が発行した借用証書を銀行に持ち込んで預金を発行しているのと同じ。小切手を持ち込んで銀行預金を発行するパターン
→小切手(他人が発行した借用証書)を銀行に持ち込んで預金を発行。
銀行は何らかの「借用証書」と引き換えに「銀行預金」というおカネを「ゼロ」から発行する。
誰かが借りなければ預金は増えない!
- 家計の預金と企業の借入
デフレでも日本の家計の預金は増えている。ただし企業の借入は減ってきている。
※グラフでは、分かりやすくするために企業の借入をマイナスで表現。
では、誰の借入が家計の預金になっているのか?
- 家計の預金と国債・財投債
企業の借金が減ってきた代わりに政府の借金が増えてきている。
政府が国債を発行すると、家計の預金が増える
日本政府が国債を発行して銀行から「日銀当座預金」を発行してもらう。
→政府は直接「銀行預金」を受け取れない。また日銀は、政府および金融機関としか取引出来ない。日本政府は、モノやサービスを提供して貰う対価として、日銀当座預金を担保に「政府小切手」(多額の場合が多い、例えば1000億円とか)を発行して民間企業へ支払う。
民間企業は、政府小切手では多額でそのまま使えないので、銀行に持ち込んで「銀行預金」を発行してもらう。
民間企業は、銀行預金を給与等支払いで、従業員の銀行預金や関連企業の銀行預金に分配する。
→この時点で家計の銀行預金残高が増える!銀行は、政府小切手を日銀に持ち込んで、日銀当座預金を発行してもらう。
つまり、銀行から発行された「日銀当座預金」は、どこかの銀行の「日銀当座預金」に戻ってくるため、マクロ的にはプラスマイナスゼロになり、政府が借りれるおカネが無くなることはありえない!
また、政府が国債を発行することで、家計の銀行預金残高が増える!
→この点は、財務省は国会議員や国民に知られたくない事実らしい。
天動説な経済学「おカネのプールがある」
経済学は、おカネのプール論(貨幣ヴェール論)が前提。
実際には「おカネのプール」は無い。
今までの経済学は天動説。MMTは地動説。
では、MMTが正しいとするならば、国債は無限に発行出来るのか?
インフレギャップとデフレギャップ
インフレギャップがある場合に国債を発行し続けるとインフレが加速するのでダメ!
デフレギャップがある内は、際限なく国債を発行しても良い。
ただし、単年度の国債増刷の場合は、企業側が短期特需と考えて供給能力を引き上げる投資を行わないため、複数年確約の上で計画的に多額の国債を発行するのが良い。
MMTが正しい理由
日本の負債と長期金利の推移
債務残高は、1970年に比べると2018年は152倍。
もし「おカネのプール」があるなら、債務が増えることで金利が上がるはず(クラウディング・アウト)だが、長期金利が1970年代は9%だったのが2018年ではマイナス。
これを今までの経済学者は説明出来ない。
現在の銀行の貸出金利は0.5~0.6%。もし長期金利が2%のインフレが続くと予想しているのだとしたら、日銀当座預金の利子との差額の損をするのでそんな低金利で貸し出せない。
銀行は今後もデフレだと予想している。
何故デフレ予想なのか?それは現在がデフレだから。
日本のマネタリーベースとインフレ率
リフレ派政策では、日銀がインフレ目標を定めて量的緩和を実施すると期待インフレ率が上がって実質金利が下がってインフレになると提唱していたが、完全に現状と異なっている。
マネタリーベースとは、日銀のおカネの発行残高と考えて良い。黒田総裁就任以降360兆円増えている。 インフレ率は、消費増税で一時期上がったが現時点で0。
おカネの発行量を増やすとインフレになるのだとすれば、現在インフレになってないとおかしいはず。
→日銀当座預金残高だけではインフレに関係ない。
何故なら、物価は誰かがモノやサービスを買わない限り上がらないから。 量的緩和で「日銀当座預金」の残高を増やしても「緊縮財政」でカネを使わないならインフレにはならない。
つまり、金融政策でインフレ率のコントロールは(少なくとも引き上げは)出来ないということを日本政府が証明した。
もう一つ日本政府が証明したことがある。
財政政策(消費増税等)によってインフレ率の抑制が簡単に出来ること。これが現実。
政府の借金の実態
2018年末時点 日本国債・財投債所有者別内訳
日銀の保有が約半分。日銀は、日本政府の子会社。
MMTの特徴の一つは、日銀と日本政府を統合政府として考えるべきだと言っている。
親会社の日本政府と子会社の日銀を連結決済で考えると46%は、返済も利払いも不要で借金と考える必要はない。
(実際には、利子は払っているが日銀決済後に国庫納付金で戻ってきて予算に組み入れられているからやっているだけ。)
日本の統合政府(政府+日銀)のバランスシート
統合で考えないと貸方(右)に政府の借金900兆円の負債がある(財務省はここをクローズアップして借金で破綻するとしている)。
統合すると、900兆円は相殺で無くなり、その代わり日銀の負債に計上している現金紙幣や日銀当座預金が貸方(右)に計上される。
もし、これでも財務省が言うように破綻する(貸方が多いから破綻する)のであれば、残った日銀の現金紙幣や日銀当座預金でも破綻することになる。
「国債・財投債」は、一定期間返済されない(償還期限)代わりに利子が高いものなので、民間銀行で考えると「定期預金」にあたる。
「当座預金」と「定期預金」の残高が増えてるから破綻するということなど有り得ない。
政府の赤字は民間の黒字
徴税より政府支出が多い場合
政府の赤字は民間の黒字:政府支出100兆円、徴税10兆円=民間は90兆円の黒字。政府支出より徴税が多い場合(財務省、IMFが言うところの財政の健全化)
政府の黒字は民間の赤字:政府支出10兆円、徴税100兆円=民間は90兆円の赤字。
統合政府の純負債は悪者か?
財務省は、統合政府でも純負債が711兆円もあるから破綻すると言っているが、もしこれをゼロにしたら、民間の711兆円の資産が無くなることになる。
「政府の負債は民間の資産」「政府の赤字は民間の黒字」を忘れないで欲しい。
【余談】国債発行や徴税がなくても政府は日銀当座預金を発行してもらえる
2018年予算の執行は2018年中(1~12月)に行われるが、実際の徴税は確定申告(2019年2~3月)が終わった後に執行される。
つまり2018年にはおカネが政府の手元に無いのに予算執行が可能である。
その仕組は、国債を銀行に持ち込む代わりに「財務省証券」を日銀に持ち込むと「日銀当座預金」が発行される。
つまり、国債発行や徴税なしでも予算執行が可能。実際にそうしている。
ただし、無制限にはできず、供給能力やインフレ率が許す限りという制限がある。
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